ちぐしんらいさんとらいじんぐさん

アラサー国会議員秘書による日々のタレコミ

出世の早道とお伺い文化

 エライ人は基本的に頼られたり、相談されることが好きだ。

 入社何年目だったか、ある提案ごとにのめりこんで残業していた夜、気分転換にソバでも食いに行こうかと廊下にでて、エレベーターを待っていたら、どえらく待たされた。たまたま2.5階級くらい上位のエライ人ももれなく待たされていて、手持ち無沙汰だったのか、ヨレヨレになってる私を見て、「おー、頑張っとるみたいね」と声をかけてくれた。一言、二言あいさつの後、まだ来ぬエレベーターに沈黙が気まずくなって「あの件はこんな感じになりそうです」と超概要をいった。「あー、それなら(他部門の)○○さんにも、××(私の直属の上司)から相談するって言っとくから、××君とご説明にあがりなさい」とエライ人はいって、ようやく来たエレベーターに二人で乗った。

 後日、エライ人にいわれたとおり直属の上司と一緒に○○さんに「事前説明」に行ったところ、その後の社内手続きが恐ろしくスムーズにすすんで驚いた。ひょんなことから根回しができてしまったのだ。根回しのパワーはおそろしい。

 エライ人に「こうしたいのですが、よろしいでしょうか」「(わかりきったことでも)これはどのように進めればよろしいでしょうか」といった、事前に「ご意向をお聞きする」ことや、「お伺いを立てる」ことが決定の潤滑剤だ。組織で出世したいなら、早めに覚えていたほうがいい。「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」をガチでやる人がだいたい出世する。

 こういうことを年中やっていると、自然に飲み会が多くなったり、何でもかんでも上司の判断を仰いだりと日本型の組織ができあがる。飲み会では気軽に上司と話せるし、根回しされることに慣れた上司は、突然降って沸いた話がおこると「俺は聞いていない!」とアレルギー反応を起こす(エライ人はビックリさせられることが嫌いだ)。そもそも根回しの上手い人が出世するから、自分がどっぷりやってきたことを部下にも求める。

 しかも根回しというのは、だれも教えてくれない、いわば裏技的なテクニックだから、裏技を知らない(気付かない)一般社員からすると「なんであいつが出世するんだ」、「ゴマすりの上手いやつが出世する」と評価の不満が蓄積される。

 日本企業は無駄な会議が多いとよく指摘されるが、会議だけでなく、こういった決定に深く関与するコミュニケーション自体に恐ろしく時間がかかっている。もはやこれは文化だ。政府はなんとか生産性を上げようと「生産性革命」なんて掲げているけど、革命では文化は変わらないから、根回しする奴は穴に投げ込むよと毛沢東ばりの焚書坑儒の「文化大革命」するしかない。

 あるいはウチの会社は根回しの上手い人を出世させますと裏技をオープン宣言すれば、みんな根回しに励んで、驚くほどコミュニケーションがはかどって生産性が上がるかもしれない。または根回し合戦で生産性が著しく下がって「もうこんなバカなことはやめましょう」って破壊的創造になるかもしれない。

 とにかく、文化に挑戦してるんだよ政府は。

 

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